第82章

莉々と石川春が入ってきて、個室を一つずつ当たっていったが、誰の姿も見当たらなかった。

「個室はさっき全部見たけど、特に変なところは――」

「……あっ――篠……」

莉々が言い終えるより先に、篠が個室の中で倒れているのが目に飛び込んできた。意識はない。

それから三十分後。

朝戸冬香がようやく渋滞を抜けて到着した。その姿を見た瞬間、悠はほとんど反射みたいに立ち上がり、取引先に二言三言うまく取り繕ってから、朝戸冬香に手短に指示を出し、振り返りもせずに出ていった……。

「どういう状況?」

朝戸冬香が七海に目をやると、七海は言いにくそうに口を開いた。

「奥さんが……また、何かやらかしまし...

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