第83章

「吉田先生、なんで入らないの?」

莉々はそう思った。上の階の修羅場も、そろそろ鎮火している頃だろう。

篠の様子を見に来たつもりが、病室の前に着いた瞬間、入ろうとしていた吉田薫が、なぜか扉をそっと閉めて戻ってくるところに出くわした。

廊下に立ち尽くす彼の顔は、まだ魂が半分抜けたみたいに青い。

「……なんでもない。篠は寝てる」

吉田薫は歩み寄ると、莉々の肩を抱いてそのまま連れていく。

悠の“いいところ”を邪魔させるわけにはいかないだろ。

下手したら、もうひと踏ん張りで甥っ子がこの世に出てくるかもしれないんだから。

兄貴を守れ!!!!

莉々は首を伸ばして病室の方をのぞいた。

「...

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