第85章

篠が「友だちがいるから」と言いかけて、ふと振り返る。

行広睦子がいない。

更衣室に戻ってスマホを取って、ようやく気づいた。行広睦子からのLINE。

「しっかり楽しんで。姉さん、邪魔な電灯役はしないから」

黒崎星矢に連れられて着いた先で、篠はようやく理解した。

――ここ、脱口秀のレストランじゃない。

「黒崎様、いらっしゃいませ?」

支配人は黒崎星矢を知っているらしく、メニューを差し出しながら愛想よく声をかけてくる。

黒崎星矢はそれを受け取り、篠へ渡した。だが支配人は篠の顔を見た瞬間、表情が固まる。

――え、芸能界の清純派……?

視線の品定めを感じ取ったのか、篠は横目で支配人...

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