第89章

釣井大信は来客の姿を認めた途端、顔色を変え、そばにいた女を慌てて押しのけて立ち上がると、悟に愛想よく駆け寄った。

「こ、これは黒崎様じゃありませんか。いったいどんな風の吹き回しで?」

悟は両腕を組み、ドア枠にもたれたまま、にやりと相手を眺める。唇の端に浮かぶ不真面目な笑みは、少しも薄れない。

「いやあ、釣井さんとしばらく会ってなかったからさ。ここで会議してるって聞いて、顔出しに来ただけ」

釣井大信はまた顔色を変え、へらへらと取り繕う。

「会議なんて、外向けの言い訳ですよ。黒崎様だって分かってたら、こっちから迎えに出ましたのに」

「じゃあ、氷室様だったら?」と悟。

釣井大信は固ま...

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