第9章

個室の中は、もくもくと煙がたちこめていた。

男の集まりといえば、煙草、酒、女。今日はそのうち二つが揃っている。

店の支配人が店でいちばん高い酒を抱え、個室の扉をノックして入ってきた。悠の前まで歩み寄ると、声を落として言う。

「氷室さん、こちら不二さんからお預かりしたお酒です」

「それと……不二さんから。飲みすぎないように、と」

支配人がそれだけ告げるや、個室の空気が一瞬で変わった。直樹以外の連中の顔が、そろって面白いことになる。

「やっぱり本当だったんだな! 氷室弁護士と不二さんの話、帝都じゃ知らない奴いないぜ」

悠は膝の上に置いた指先に、わずかに力を込めた。――また篠の悪ふざ...

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