第98章

「道端で停めて、アイスコーヒーでも買おう」

篠は今、腹の底に火が溜まりきっていて、ぶつける先がなかった。

莉々が車で帝都でも名の知れた文芸街を通りかかったのを見て、ふとコーヒーが飲みたくなる。

莉々が車を停め、篠と行広睦子が前後して降りると、そのまま店へ向かった。

「悠ってさ、この件にかこつけて、昔あんたに振られた恨み晴らしに来てるんじゃないの?」

「十中八九ね」

「もしそうならさ、そのクソ男、初日にあんたを結婚の檻に放り込んで、二日目に離婚とか言い出すんじゃない? それで世間に向かって『芸能界の清純派を俺が捨てた』って吹聴してさ」

篠の足が止まる。

……は?

悠がそんな真...

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