第5章

石原真奈美の視点

九時、ガラスのドアを押し開けると、経理部の間宮沙織がコーヒーから顔を上げた。

「うそ、真奈美」彼女は駆け寄ってきた。「どうしたの? すごく綺麗」

「ちょっと休暇を取っただけだよ」

「いや、本気で言ってるんだけど。文字通り輝いてるよ。誰かいい人でもできた?」

顔が熱くなるのを感じた。「……かもね」

沙織があまりに甲高い声を上げたので、思わずその腕を掴んでしまった。「わかったから、静かにして。みんなに聞こえちゃう」

でも、彼女の言うことは間違っていなかった。自分でも変化を感じていた。身軽になった、というか。何ヶ月も息を止めていて、やっと息の吐き方を思い出し...

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