第8章

 悠人は勢いよく立ち上がると、翔一の肩を乱暴につかんだ。目を吊り上げ、唇の端を震わせながら低く唸る。

「翔一! お前、水に突き落とされて溺れかけたんじゃなかったのか? なんで平気でここに立ってる!」

 翔一は悠人の鬼のような形相に怯え、「わあっ」と泣き出した。指を突きつける先は真紀子。

「ママが教えてくれたの! ママが、ぼくが水に落ちたふりして、オバちゃんに押されたって言えば、オバちゃんは追い出されて、パパはずっとぼくたちのパパになるって!」

「ぼく、ほんとは水になんか落ちてない! ママがホテルのおふろにかくして、落ちたってことにしたの!」

 幼い口からこぼれた無邪気な数言が、まる...

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