第1章

葵視点

招待状が届いたのは、火曜日の朝のことだった。陽介の運転手が届けに来たのだ。クリーム色の封筒を開けるとき、私の手は震えていた。見慣れた彼独特の筆跡が、すぐに目に飛び込んできたから。

『葵、今週の土曜の夜に開かれる本田産業の会食に、私と一緒に出席してもらいたい。七時までに準備を済ませておくように。   陽介』

鼓動が、まるで嵐のように肋骨の裏で荒れ狂っていた。私は震える手で、その一枚のメモを何度も何度も読み返した。三年もの間、彼の秘密を守る影として、ひっそりと生きてきた私を、彼が、ついに表舞台へと引き上げようとしている。その途方もない意味を、私が悟れないはずがなかった。本田産業の会食。それは、この街のビジネス界で最も権威ある社交の場であり、そこに集うのは、この街の未来を左右するような、錚々たる顔ぶればかりだ。

私たちのことを、発表するつもりなんだ。その考えが、全身に電気のように駆け巡った。三年間。三年間も待ち続けて、それがついに現実になる。

私は招待状を胸に押し当て、目を閉じた。陽の光をあまりにも長く待ち続けた花のように、希望が胸の中で花開いた。今日は、私たちの契約が始まってから、ちょうど三年目の記念日だった。私の世界を粉々に打ち砕き、そしてあり得ないほど奇妙な形で再構築した、あの日から。

三年前.......

私は二十歳で、子供の頃から使っている自分の寝室に立ち、優雅なネイビーブルーのドレスを整えていた。今日は私たちの婚約パーティーになるはずだった。中村陽介と私が結婚することを、社交界に正式に発表する日。

「葵、車が来たよ!」父の声が階段の下から聞こえてきた。

私たちは何週間もかけてこの婚約発表の準備を進めてきて、結婚式は翌年の春に決まっていた。

電話が鳴ったのは、祖母の真珠のイヤリングをつけようとしていた、まさにその時だった。

「葵」陽介の声は張り詰めていた。「パーティーの前に、君に会う必要がある」

「もちろん! みんながどんな顔をするか、今から待ちきれないわ.......」

「パーティーのことじゃない」彼の口調の鋭さに、胃が締め付けられる。「庭で会おう。今すぐだ」

彼がいたのは、二年前に初めてキスをされた、あの薔薇の茂みのそばだった。だが、私の前に立つその男は、あの春の夜に私の顔を優しく包み込んでくれた陽介ではなかった。

「今日、君とは婚約できない」彼は前置きもなしにそう言った。

その言葉は、氷水のように私に突き刺さった。「ええ?……急にどういうこと?」

「代わりに、田中美咲と婚約する」

田中美咲。その名前は、静かな水面に投げ込まれた石のように私たちの間に落ち、決して止まることのない波紋を広げた。彼女のことは知っていた。大学の誰もが知っていた。他の女の子たちが自己嫌悪に陥るほど、気負いのない美しさを持った人で、名門の出身だった。

「理解できないわ」私の声はか細く響いた。「私たちは今夜、婚約を発表するはずじゃなかったの」

彼は言った。「彼女は僕の命の恩人なんだ、葵。去年のハイキング旅行で、岩が崩れてきたとき、彼女はすべてを危険に晒して僕を安全な場所に引っ張り出してくれた」

ハイキング旅行。彼がどこか変わって、上の空で帰ってきたのを思い出した。仕事のストレスのせいだと思っていた。

「僕は彼女に命を借りている」彼は、私と目を合わせようとせずに続けた。「そして今、彼女の父親が彼女を橋本裕二……あの三度も結婚している不快な老人と結婚させたがっている。彼女は助けを求めて僕のところに来たんだ」

「だから、彼女と婚約するって言うの?ふざけるな!」冷静を保とうとしたにもかかわらず、声にヒステリックな響きが混じってしまう。「あなたは私を愛しているでしょう。私たちは今夜、世界中に婚約を発表するはずだったのに」

ようやく彼が私を見た。その目に宿るものを見て、私は膝から崩れ落ちそうになった。罪悪感、それは確かにある。だが、それと同じくらい強い決意も。

「すまない、葵。本当に」

「私はどうなるの? 私の気持ちは?」

「これが残酷なことだとは分かっている。僕たちのすべてを壊していることも」彼は一歩近づいた。「だが、提案があるんだ」

「三年だ」彼は静かに言った。「三年だけ時間をくれないか。彼女への恩を返し、彼女が父親の策略から安全でいられるようにするための時間を。彼女の父親が家の信託財産を管理できる期間は、三年で切れる。彼女が独立すれば、僕は離れることができる。三年の終わりに、婚約を解消して、僕たちは正式に一緒になれる」

私は彼を見つめ、自分の耳を疑った。「あなたが他の誰かと婚約している間、私に待っていろって言うの?」

「君の面倒は見る。何不自由させない。そして、それが終わったら.......」

「終わったら、私はあなたの二番手になるってわけね!」言葉が私の中から爆発した。「あなたが他の誰かとヒーローごっこを終えた後で戻ってくる女になるなんて!」

「葵!」

「出ていって」私は彼に背を向けた。「私の目の前から消えて」

彼はそれ以上何も言わずに去っていった。二時間後、私は自分の寝室の窓から、私たちの婚約パーティーに来るはずだった車が、代わりに田中邸に向かっていくのを眺めていた。夕方までには、社交界のニュースは中村陽介と田中美咲の電撃婚約の話題で持ちきりになっていた。

その夜、私は長いこと泣いた。陽介はひっきりなしに電話をかけてきた。私が応答を拒否しても、彼は私がついに電話に出るまで執拗にかかけ続け、そして説明を止めようとしなかった。結局、私は彼の提案を受け入れた。彼は電話越しに、これは命を救われた恩を返すためだけのことだと約束した。私が彼を三年待つだけでいい、三年後には美咲と別れて私の元に戻り、私と婚約すると。

私に選択肢はなかった。彼を本当に愛していたし、彼のために三年待つ覚悟はできていた。父がそれを知ったとき、私を愚かだと罵った。そんな男の言葉をどうして信じられるのかと。でも私は頑固で、父との連絡さえも減らした。

.......

手の中の招待状を再び見つめると、記憶が薄れていった。もう、そんな日々は終わり。今夜は違う。今夜、陽介さんは美咲さんとの婚約を破棄して、私を彼の真実の愛する人として紹介してくれる。

午後は完璧なドレスを選ぶのに費やした。深いエメラルドグリーンの、私の赤褐色の髪を炎のように見せ、陽介が誕生日にくれた翡翠のイヤリングを引き立てるドレスだ。彼はこのイヤリングを覚えているはず。私はそう思いながら、丁寧にそれを留めた。緑は私の色だと言ってくれたことを、彼は覚えているはず。

期待はほとんど耐え難いほどだった。靴を三回履き替え、化粧を二度やり直し、顔が痛くなるまで鏡の前で笑顔の練習をした。

時間通りに本田産業のボールルームに到着し、人混みの中から陽介さんの見慣れたシルエットを探した。バーの近くに彼を見つけたとき、私の心臓は三年前と同じ、少女のような興奮で跳ねた。

三年間溜め込んだ希望と愛で輝く笑顔を浮かべ、私は彼に向かって歩き始めた。これが私たちの瞬間。これが、すべてがようやく――

彼の隣に、一人の女性が現れた。

美咲だった。

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