第54章

江崎玲子は後悔した、残るべきではなかった。

この前古江直樹に景山ホテルに行ったことがあるかと聞かれ、今になって嘘がバレてしまった。

江崎玲子が答える前に、さやかが説明した。「江崎さんは行ったことありますよ、古江社長。秘書課の今回の飲み会の場所、主任が紹介してくれたんです。彼、わざわざ私に江崎さんが前に行ったことあるって言ってましたから」

「……」

説明など必要なかったのに。

もう...取り繕いようがない。

古江直樹の冷たい視線が彼女を射抜き、何も言わないのに心が凍えるようだった。

江崎玲子は渋々無理に笑って言った。「行ったことあります。あの日はちょっといただけですぐ帰ったので、...

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