第57章

江崎玲子の電話は電源が切られていた。帰り道で、彼女は臆病なところがあり、会社からまた何か用事で呼び出されるのではないかと心配して、思い切って電源を切り、静かな時間を得ようとしたのだ。

林澤明美が栄養剤を大小の袋に詰めて部屋に持ち込む様子を見て、江崎玲子は少し意外に思った。以前二人は仲たがいしていて、和解したとはいえ、明らかに以前ほど親しくなかったからだ。

今、林澤明美が自ら栄養剤を持ってきてくれたことで、仕事を失ったばかりの江崎玲子の心には、わずかな慰めが生まれた。

江崎玲子は突然、林澤明美を抱きしめた。「明美」

「江崎玲子、どうしたの?」林澤明美は尋ねた。「何かあったの?」

「何...

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