第154章

車から降りた佐藤安子は、抱えきれないほどの菊の花束を手に、松本絵里の真っ直ぐ前へと歩み寄った。サングラスを外し、真摯な眼差しを絵里に向けながら語りかける。

「ごめんなさいね。お祖母様をきちんとお見送りするつもりだったのだけれど、どうしても外せない用事があって。こんなに遅くなってしまうなんて」

松本絵里は、佐藤悟に握られていた手をそっと引き抜き、佐藤安子に向かって深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、安子さん」

「裕也、このお花を松本のお祖母様にお供えしてきてちょうだい」

周囲を見渡し、そこに佐藤裕也の姿を見つけると、安子はすかさず彼を名指しした。

佐藤裕也は前に進み出て花束...

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