第156章

佐藤安子の中にある佐藤悟への信頼度は、すでに底を突いていた。彼が土壇場で逃げ出すのを恐れた彼女は、中村哲也に車を運転させ、自ら彼を会社まで連行したのである。

道中、姉弟は一言も口を利かなかった。中村哲也も不用意に話しかけることができず、車内の空気は氷点下まで冷え込んでいた。

会社に到着すると、二人は前後に並んで車を降り、ビルへと歩を進める。

佐藤安子はまるで戦場へ赴くかのように鼻息が荒いが、対する佐藤悟の足取りは軽く、暢気にスマホをいじり続けている。

エレベーターの中で、佐藤安子がようやく沈黙を破った。彼女は険しい顔で佐藤悟を問い詰める。

「あの狸爺どもをどうあしらうか、ちゃんと考...

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