第159章

佐藤悟は森に声をかけず、自らハンドルを握って会社から支社の寮へと車を走らせた。

道中あれほど逸る気持ちを抱えていたというのに、いざ目的地に着くと、その分だけ臆病風に吹かれてしまう。

車内に座ったまま、見慣れた階上の窓を見上げる。どうしても足が向かず、松本絵里に電話をかける勇気すら湧かない。この先に何が待ち受けているのか、見当もつかなかった。

「絵里、下に車が停まってるんだけど、乗ってるのあんたの旦那さんみたい」

宅配便の荷物を受け取りに下へ降りた高橋桜は、ビルの前に停まる高級車を目にして好奇心から覗き込んだ。運転席に座る佐藤悟が、スマホをいじっては放り出し、ハンドルに突っ伏してため息...

ログインして続きを読む