第166章

松本絵里は安世を抱いたまま、佐藤爺さんのもとへ歩み寄った。

「お爺様、初めまして」

穏やかな声で挨拶をする。心の中では、佐藤悟が安世を自分に預けてくれて本当に良かったと胸を撫で下ろしていた。もしこの子がいなければ、会長の放つ威厳を前にして、緊張のあまり手のやり場にすら困っていただろう。

佐藤爺さんは顔を上げて松本絵里を見つめると、目をこすり、さらにじっと目を凝らした。そして、中村哲也に声をかけた。

「哲也、わしの眼鏡を取ってくれ」

老人は中村哲也から老眼鏡を受け取ってかけると、松本絵里をしげしげと観察し、今度は佐藤安子に指示を出した。

「安子、ひとまず安世を連れていきなさい」

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