第183章

「見合いはしないと言ったはずだ。俺のことに構うな」

坂田健之は苛立たしげに電話を切り、スマホをデスクに放り投げた。

ドアの外で、秘書は思わずため息を漏らした。今朝出勤する前に星占いを見るのを忘れていたが、今日は間違いなく水星の逆行期間に違いない。出くわす上司がどいつもこいつもまともではないのだ。

彼女は腹を括り、坂田健之のオフィスのドアをノックした。

「坂田課長、佐藤社長が至急お呼びです」

彼女は恐る恐る声をかけた。

「わかった。すぐに行く」

坂田健之は常に紳士的で、負の感情は自分の中で消化し、決して同僚に八つ当たりすることはなかった。

秘書はホッと胸をなでおろした。感情の起...

ログインして続きを読む