第206章

翌朝、松本絵里が目を覚ますと、すでに隣に佐藤悟の姿はなかった。

彼が代表取締役に就任してからは、目が回るほど忙しくなり、神出鬼没でなかなか顔を合わせることも減っていた。

ズキズキと痛む重い体をどうにか起こすと、ベッドの脇に一枚の付箋が貼られているのに気づいた。

荒々しくも力強い、見慣れた男の字でこう書かれている。

「絵里、昨夜はご苦労だった。休暇を取っておいたから、ゆっくり休むといい」

「君を愛する夫より」

松本絵里は思わずため息をついた。この男ときたら、完璧なくせに、事あるごとに彼女を仕事に行かせまいとする。

一ヶ月という工期を設定したのは彼自身だというのに、責任者である彼女...

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