第210章

佐藤悟の今回の出張は、電話もメッセージもなく、まるで彼女の生活から蒸発してしまったかのようだった。

彼が離れていった最初の夜、松本絵里はかつてないほどの空虚感に襲われた。

家の中の至る所に彼の気配が漂っているのに、彼だけがいない。

仕事上の最大の障害が解決したというのに、その喜びを分かち合う相手もおらず、彼女は佐藤悟の枕に向かってしばらく独り言を呟いた後、無理やり眠りについた。

翌朝、彼女は気力を振り絞り、録音データを手に現場へと向かった。

佐藤悟と連絡が取れないのなら、いっそ忙しく過ごそう。ハードな仕事で一分一秒を埋め尽くし、彼への思いを紛らわせるのだ。

現場に着くなり、彼女は...

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