第211章

佐藤裕也は松本絵里が佐藤安子に告げ口するのを恐れ、慌てて機嫌を取るように言いよどんだ。

「社内の噂なんだけど……いいか、あくまで噂だからな。悟が……海外で事故に遭ったって……」

「事故って?」

松本絵里は心臓が跳ね上がるのを感じ、思わず佐藤裕也の腕を掴んで身を乗り出した。

「松本絵里、落ち着けって! 今運転中だぞ」

突然腕を掴まれた佐藤裕也は、動揺とわずかな高揚感を覚えながら、思わず急ブレーキを踏んで車を道の真ん中に急停車させた。

幸いにもこの区間は通行車両がほとんどなく、そうでなければ間違いなく追突事故を引き起こしていただろう。

松本絵里は大きく深呼吸をし、きっぱりと言い放っ...

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