第212章

佐藤悟からの音沙汰はない。

佐藤安子も、彼女がA国へ行くことには反対していた。

今のように、何もできずにただ待つしかない状況が、本当に辛かった。

松本絵里は一人、ぽつんと座り込んだまま、音もなく涙をこぼしていた。

ちょうどその時、J大体育学部の男子学生のグループが連れ立って食事にやって来た。

「おい、見ろよ。あれ、昇太さんの女神様じゃないか?」

「どこ? 早く教えてくれよ」

「あそこの隅に座ってる人だよ」

「本当だ。でも、女神様、泣いてないか……」

「早く、早く昇太さんに電話しろ」

小林昇太がその電話を受けた時、彼は羽鳥陽に付き合って昼食をとっている最中だった。

羽鳥空...

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