第43章

退社後、松本絵里は会社の入り口に見慣れた黒い社用車を見つけ、高橋桜に名残惜しそうに手を振って別れを告げると、もたもたと車に向かった。

車に近づくと、後部ドアが内側から開き、佐藤悟が意地悪そうな笑みを浮かべていた。「もたもたして乗らないなんて、私から逃げてるのか?ん?」

松本絵里は森さんだけが迎えに来ていると思っていたので、佐藤悟を見て嬉しい驚きを隠せなかった。

「来てるなんて知らなかった。今日はどうして迎えに来てくれたの?」

彼女は佐藤悟に引っ張られて車に乗り込み、彼の隣に座った。

「絵里、私が迎えに来て喜んでるみたいだな」

佐藤悟は彼女の頭を撫でて、きちんとしていた髪型を少し乱...

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