第58章

佐藤安子はようやく中村哲也に、佐藤悟が好きなのは女性であって男性ではないということを説明し、厳しく警告した。「松本絵里のことを知っていると彼に言うんじゃないわよ」

中村哲也は右手を掲げた。「君への愛にかけて誓うよ、悟には一言も漏らさない」

佐藤安子はため息をついた。この男は、これだけが取り柄だ。

「じゃあ、恒信グループについては、どうする?」オフィスにまだ頑固な石原透哉がいることを思い出し、中村哲也は頭を抱えた。

「買収したいなら買収させればいい。どうせ会社は将来彼のものになるんだから、こんな小さなことで争う必要はないわ。会社の金で、彼の助手に手続きさせなさい。あの傲慢な態度を見るの...

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