第64章

松本絵里は病院での付き添いに明け暮れ、その忍耐はすでに限界に達していた。

ようやく退院手続きを済ませ、二人分の荷物を抱えてホテルへと戻ってきた。

一方、佐藤悟はホテルのロビーで一晩中待ち続けていた。松本絵里に電話しても出ない。佐藤裕也にかけても繋がらない。もし石原透哉が駆けつけて止めていなければ、とっくに警察に通報していただろう。

一台のタクシーがホテルのエントランスに滑り込む。松本絵里が車から降り立ち、トランクから二人分の荷物を取り出すと、さらに車内から佐藤裕也を引きずり出した。片手で二つのスーツケースを引き、もう片方の手で佐藤裕也を支えるその姿は、まるで戦場から帰還した女戦士のよう...

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