第81章

本社の不文律に従い、朝、松本絵里は始業十五分前にはオフィスに顔を出した。

尻が椅子の座面に触れるか触れないかというタイミングで、高槻静奈の声が飛んでくる。

「松本絵里、ちょっと来なさい!」

課長室に入ると、高槻静奈は顔を青ざめさせ、腕を組んで仁王立ちしていた。その全身からは、他者を拒絶する冷たいオーラが漂っている。

彼女の目の前には、昨日、中村さんに決裁印をもらった書類の山が広げられていた。

「説明してもらえるかしら」

高槻静奈が氷のような声で言った。

「説明も何もありません」

松本絵里は一歩も引かず、淡々と答える。

「私はこのプロジェクトのメンバーではありません。頼まれて...

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