第232章 触れてはいけない話題を持ち出す

鈴木晶と細谷心晴は、誘拐されたはずの田中唯が、今やナイフを手に太西光太郎を人質に取っている光景を目の当たりにし、二人とも呆然としていた。

「唯、どういうこと?」細谷心晴が訝しげに尋ねる。

田中唯は二人を見るなり、口をへの字に曲げ、今にも泣き出しそうになった。

鈴木晶はその目つきから、彼女がすでに限界であること——まさに強弩の末であることを悟り、すぐさま部下を連れて駆け寄った。

部下たちが太西光太郎を取り押さえる一方で、彼は田中唯をしっかりと腕の中に抱きしめ、あやす。

「もう大丈夫だ。怖がらなくていい。俺がここにいる。もう大丈夫だから」

「う、うう……晶」

田中唯は慣れ親しんだ腕...

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