第77章 会社の前で彼女を阻む

「田中唯」

田中唯が車を降りて会社の入り口まで来たところで、名前を呼ばれた。

振り返って声の主を探すと、田中礼子がこちらへ歩いてくるところだった。

「どうしてここに?」田中唯は眉をひそめて問い詰めた。

以前はまだ「あなた」という敬称を使っていたが、今はそれも使わない。

田中礼子は口の端を歪めて言った。「金持ちに嫁ぐとやっぱり違うわね、随分と偉そうになったじゃない。最低限の敬意も払えないなんて、本当、長年育ててきた甲斐がないわ」

田中唯は顔をこわばらせ、真剣な口調で言った。「第一に、あなたは私を養育していません。物心ついた時から、実の父親でさえ養育費をびた一文くれたことはありません...

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