第87章 また彼女の手助け

田中礼子の一声で、田中大志が駆け寄り田中唯を捕まえ、引きずるようにして外へ連れ出そうとした。

病院の職員がそれを見て止めに入ってくる。

田中礼子は鬼婆のように突進し、彼らに向かって怒鳴りつけた。「実の親子の問題に、あんたたちも口出しする気? 誰か一人でもお節介を焼く勇気があるなら見てなさい!」

その一喝は、本当に皆を怯ませてしまった。

誰もが田中唯を知ってはいたが、しょせん他人だ。田中大志は実の父親であり、本気で騒ぎ立てられれば、自分たちに理はない。

「離して、帰りたくない」

田中唯は必死にもがき、田中大志の拘束から逃れようとする。

しかし、田中大志は壮年の成人男性だ。力を込め...

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