第89章 あなたも私に嫉妬する

 井上俊也も負けじと、凶悪な顔で睨み返した。

 だがその時、携帯が鳴った。画面には「父親」の二文字が表示されている。

「もしもし、親父」

「どこにいるんだ?」

 低く重々しい、不機嫌極まりない詰問の声だった。

 井上俊也は目を見開いた。その時になってようやく、自分がなぜ病院に来たのかを思い出したのだ。

 父親が体調を崩して入院しており、自分は付き添いに来ていたのである。

 しかし田中唯に会ったせいで、そんなことはすっかり頭から抜け落ちていた。

「すみません、親父。もう少し待ってください、すぐそっちに行きますから」

 細谷拓真は怒って電話を切った。

 幸いにも急病ではなかっ...

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