第123章 1億

一条夫人はすぐに位置情報を送ってきた。

藤咲花音はそれに目を通す。都心のホテルだった。

彼女は簡単に身支度を整えた。

階下に降り、会社の前に桐島翔太の車がないのを確認して、彼女は密かに安堵の息をついた。タクシーを拾い、ホテルへと急ぐ。

到着した時、一条夫人はすでに個室で待っていた。

初めて会ってから十年近くが経つというのに、彼女の顔には歳月の痕跡など微塵もなく、端正で優雅な佇まいだった。

「藤咲さん、どうぞ」

彼女が入ってくるのを見て、一条夫人は微笑んで席を勧めた。

藤咲花音も礼儀正しく微笑み返し、向かいの席に腰を下ろす。

気のせいだろうか。一条夫人の笑みは目元まで届いてお...

ログインして続きを読む