第132章 もう呼ぶ必要はない

藤咲花音は、警備員が桐島翔太への対応に追われている隙に上階へと忍び込んだため、その後の騒動については何も知らなかった。

昼休み、食事を共にしていた佐々木舞の愚痴を聞いて初めて、桐島翔太が警備員に手を上げたという事実を知らされた。花音の心境は複雑だった。

佐々木舞は口をもぐもぐさせながら、我慢できないといった様子で尋ねてきた。

「カノン姉さん、あの人、昔からあんな感じだったんですか? 一体どうやって姉さんを騙して結婚したのやら」

藤咲花音は首を横に振った。以前の桐島翔太は、あんな人間ではなかったと言いたかった。

かつての彼は太陽のように明るく、どこへ行ってもすぐに人と打ち解けるような...

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