第153章 眠れるわけがない

藤咲花音は、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。

桐島征十郎はベッドサイドに腰を下ろし、彼女の寝顔をぼんやりと見つめていた。

ドアの外から、佐々木隆美の恐る恐る声をかける音がした。

「桐島社長」

我に返った桐島征十郎は、藤咲花音の布団を丁寧に掛け直し、立ち上がって部屋を出た。

佐々木隆美は素早く彼を一瞥した。さっきと変わらず、全身隙のない整った姿を見て、ようやく安堵の息をつく。

彼は先ほど、お祖母様に「社長は藤咲花音に手を出さない」と自分の口で約束してしまったのだから。

しかしドアの前であまりに長く待たされたため、内心気が気ではなかったのだ。

よかった、本当によかった。

部屋...

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