第158章 彼を手に入れる

藤咲花音は言い終えると、きびすを返して立ち去ろうとした。

目立つようなことはしたくない。それに、あの二人の間に漂う独特の空気感には、どうあがいても割り込めそうになかったからだ。

「チッ」

一条裕也が舌打ちをする。

「お前がそうやって帰ろうとすると、まるで俺が何かしたみたいじゃねえか」

そう言うと、彼は向かいに座る男を揶揄するように見やり、藤咲花音に視線を戻した。

「見ろよ、おたくの桐島社長のあの目。俺のこと食い殺しそうな勢いだぞ。帰るべきなのは、どう考えても俺の方だろ」

カフェのテーブルセットはこぢんまりとしていて、男女ペアならちょうどいいが、大柄な男二人には窮屈すぎる。一条裕...

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