第164章 心の氷河がゆっくりと溶け出した

藤咲花音は微睡みの中で、不意に体が大きく揺れるのを感じて目を覚ました。

「ここは……どこ?」

薄暗い視界に、すぐには状況が飲み込めない。

だが、鼻をくすぐる懐かしい香りが、意識よりも先に記憶を呼び覚ます。

さらに、自分が何か硬いものの上に横たわっていることに気がついた。

視線を巡らせると、上質なスラックスに包まれた長い脚が目に入る。

桐島征十郎の骨張った手が彼女の肩に置かれ、不安定な体を支えてくれていた。

夢を見ているのだろうか。

今の時間、桐島征十郎は出張中のはずだ。戻るのは来週だと言っていた。

夢なら、いいか……。

藤咲花音は身じろぎし、より心地よい体勢を探して再びそ...

ログインして続きを読む