第165章 眠れない

部屋には藤咲花音一人だけが残された。

本来なら強烈な睡魔に襲われているはずなのに、桐島征十郎に言われた言葉が頭を離れず、どうしても心が落ち着かない。

そんな混乱の中、バッグに入れていたスマホが鳴り響いた。

佐々木舞からだ。兄である佐々木隆から花音が倒れたことを聞き、すぐに電話をかけてきたらしい。

通話ボタンを押すと、向こうから佐々木舞の心配そうな声が飛び込んできた。

「カノン姉さん、兄貴から過労で倒れたって聞いたけど、大丈夫!? 具合はどうなの?」

相変わらずの賑やかさだ。藤咲花音の沈んだ意識は、彼女の明るさですぐに浮上した。

「大丈夫よ。ただの寝不足で、うっかり気絶しただけだ...

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