第173章 もう少し時間をくれ

藤咲花音の落ち込みようは、誰の目にも明らかだった。

若林勝は眉をひそめ、彼女に声をかけた。

「少なくとも、お祖母さんは最期まで、お前を責めたりしなかったじゃないか」

藤咲花音の長い睫毛が震える。

鼻の奥がツンとし、唇を噛みしめて、溢れそうになる涙を必死に堪えた。

「若林弁護士は、花音とずいぶん親しいようだな」

桐島征十郎の声が、重々しく横から響いた。

その圧倒的な存在感を、若林勝が忘れていたわけではない。ただ、彼の意識が藤咲花音に集中していただけだ。

桐島征十郎の声を聞き、若林勝はようやく彼の方を向いた。

「私と花音は幼馴染ですから。それより桐島社長、今日はいったいどういっ...

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