第175章 ただ妊娠しただけ

若林勝則はすでに病室を出ようとしていたが、その言葉に足を止め、振り返って彼女を値踏みするように見つめた。

藤咲花音は平静を装った。

「桐島翔太は私が妊娠しているなんて知りません。ただ、それを口実にあなたを脅そうとしただけです」

「今、彼とは離婚調停中なんです。もし桐島家に妊娠のことが知られたら、子供の親権を奪われるかもしれませんし……」

藤咲花音は言葉を濁し、続きを飲み込んでこう締めくくった。

「とにかく、秘密にしてください。お願いします」

若林勝則はしばらく彼女を見つめていたが、やがて口を開いた。

「秘密にするのはいい。だが、何か事情があるなら隠さないでくれ。カノン、お祖母さ...

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