第179章 あなたの声が聞きたい

通話が繋がると、静まり返った部屋に桐島征十郎の低い声が響いた。

「もう帰ったのか?」

その声は、不思議と藤咲花音の腹痛を和らげてくれるようだった。

藤咲花音は無意識に答えた。「ええ」

桐島征十郎は重ねて尋ねる。「いつ帰ったんだ? 晩飯は済ませたか?」

藤咲花音は片手で下腹部を押さえながら、混乱する頭で答える。「帰ってすぐに食べたわ」

そう言うと、彼女はぎこちなく問い返した。「何か用?」

電話を切りたかった。

お腹の中に桐島征十郎の子がいる今、彼の声を聞くと、どうしても余計なことを考えてしまう。

電話越しに聞こえる桐島征十郎の声は、酷く落ち着いていた。「待っていてくれと言った...

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