第206章 他に誰がいるというのか

病室に戻っても、藤咲花音の鼓動はまだ早鐘を打っていた。

祖母の点滴はちょうど終わったところだった。看護師の花子が針を抜き、夕食のために寝室から車椅子で連れ出してくれている。

花音の姿を認めると、花子は何か言いたげな様子を見せたが、口をつぐんだ。

「夕飯を食べてくればよかったのに」

祖母が嬉しそうに尋ねる。

花音は慌てて表情を整えた。

「お祖母ちゃん……」

祖母は言った。

「午後は征十郎さんと一緒だったんだろう? さっき送ってくれたのも彼かい?」

祖母は孫娘の紅潮した頬を見て、すべてを悟っていた。そして、心から安堵していた。

かつて桐島翔太と一緒だった頃も、花音はそれなりに...

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