第215章 入院観察

「藤咲花音!」

 どこに隠し持っていたのか、浅本義昭は一本のナイフを取り出し、般若のような形相で藤咲花音に向かって突進してきた。

 このクズ女が俺を見逃さないというなら、いっそ道連れにしてやる——そんな捨て鉢な狂気が見て取れた。

 藤咲花音は初めて直面する修羅場に、一瞬、思考が停止してしまった。

 ハッと我に返ったとき、視界に入ってきたのは、彼女を庇うように立ちはだかる桐島征十郎の背中だった。

 彼女は本能的に手を伸ばし、彼を引き戻そうとした。

 だが、その指先が桐島征十郎に触れた瞬間、浅本義昭はすでに二人の目前に迫っていた。

「ブスリ」という鈍く湿った音が、耳元で数十倍にも増...

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