第230章 彼に逆らう勇気はない

「彼女のことだけではありません。もっと重要な案件が……」

 安枝課長は佐々木隆美に向かって、言葉を濁した。

 残りの話は、桐島征十郎本人に直接伝えるという含みを持たせた言い方だ。

 佐々木隆美は、そんな彼女を値踏みするように一瞥した。

 折よく、桐島征十郎が数名の重役との話を終え、社長室のドアが開いた。一行が中から出てくる。

 安枝課長は彼らに恭しく挨拶を済ませると、社長室の方を向き、声を張り上げた。

「佐々木秘書、お手数ですが桐島社長にお取次ぎをお願いします」

 佐々木隆美が眉をひそめる。

 ドアはまだ閉まっていなかったため、外の騒ぎは桐島征十郎の耳にも届いていた。

「通...

ログインして続きを読む