第259章 別れ

藤咲花音は桐島征十郎の胸に顔を埋め、声もなくしばらく泣き続けた。

彼女が泣いていることに、彼が気づいていないはずはなかった。それでも桐島征十郎は何も言わず、ただ静かに彼女を抱きしめていた。

やがて藤咲花音が身じろぎすると、彼はゆっくりと腕を解いた。

「どうした? 最近張り詰めていたからか、それとも俺に会いたかったのか?」

桐島征十郎は、彼女の気まずさをあえて言葉にすることはなかった。

ルクが彼女の脚にぴったりと寄り添い、鼻を鳴らすのもやめて、青い瞳でじっと彼女を見上げている。

藤咲花音は小さく鼻をすすり、残された力を振り絞るようにして、重い口を開いた。

「ごめんなさい、桐島さん...

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