第326章 退いて進む

藤咲花音《ふじさきかのん》はもう眠りに落ちそうだった。

佐々木舞《ささきまい》の質問が耳に届いても、深く考えることなく、ぼんやりとした頭で答える。

「試験の日に知り合った後輩。彼も同じ団地に住んでるの」

しかし、舞のほうはすっかり目が冴えてしまっていた。寝返りを打ち、じっと花音を見つめる。

「後輩? そんなに親しいの? お祖母さんは今日、カノンが彼と一緒にいたって言ってたけど?」

その言葉に探るような気配を感じ取り、花音は再び目を開けて説明した。

「ただ口裏を合わせてもらっただけ。お昼に玲子《れいこ》姉さんとご飯を食べてから、桐島征十郎《きりしませいじゅうろう》に会いに行ったのよ...

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