第334章 身を捧げる

ルクは自らに待ち受ける過酷な運命など知る由もなく、桐島征十郎の腕の中で必死にもがいていた。あわよくば彼の手に噛みつこうと、しきりに首をねじっている。

桐島征十郎は双眸を細め、片手で犬を押さえつけながら、もう片方の手でスマホを取り出し、佐々木隆美へ音声メッセージを送った。

「ルク用に、特大の犬用ケージを一つ注文しておけ」

その声色は、酷く底冷えがしていた。

言葉の意味を察知したのか、ルクは途端に大人しくなり、床に這いつくばって尻尾を振りながら、哀れっぽくクンクンと鼻を鳴らす。

そんな一人と一匹のやり取りを見て、藤咲花音はたまらず吹き出し、歩み寄ってルクの両耳をふさいだ。

「聞かなく...

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