第359章 娘の名前は愛莉

「娘……?」

一条夫人は頭がぼんやりしたまま、目の前の少女を見つめた。

――この顔、どこかで見たことがある。けれど、名前がどうしても出てこない。

裕也が「自分の娘だ」と言った。なら、この子は愛莉なのだろうか。

一条夫人の顔に、ふっと自責の色が浮かぶ。

たった一日。それなのに、娘の顔すら思い出せないなんて――母親失格だ。

だから愛莉は自分のもとを去ったのだ、と。

病院の入口に、息が詰まるような沈黙が落ちた。

一条夫人は少女をじっと観察する。藤咲花音は静かにその視線を受け止めながらも、横で握り締めた指先が小さく震えていた。

さっきの一条夫人の取り乱した様子は、花音も見ていた。病...

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