第365章 二つの顔

一条裕也の言葉を聞いた瞬間、藤咲花音の胸に、どくりとした困惑が走った。

一条愛莉……? どうして、そんなことを。

あれほど一条奥さんに可愛がられていたのに。なぜ、その一条奥さんに手をかける必要がある?

藤咲花音が思いついた可能性は、ただひとつだけだった。――一条愛莉の出生にまつわること。

花音は反射的に隣へ視線を投げ、桐島征十郎に答えを求めた。

だが桐島征十郎の顔を見た瞬間、花音は息をのんだ。

一条裕也の話に、彼はまるで動揺していない。……まるで、最初から知っていたみたいに。

藤咲花音は眉を寄せ、胸の奥で小さく答えが形になっていく。

その視線に気づいたのか、桐島征十郎もこちら...

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