第366章 アイリは今日はとてもいい子です

竹多里恵と竹多のお爺さんが帰ったあと、藤咲花音と桐島征十郎も辞去することにした。

彼女がここへ来たのも、ただ一条奥さんの様子を確かめたかったからだ。結果が分かった以上、胸のつかえは下りた。

「カノン」

一条和成は妻をなだめ終えると立ち上がり、娘を呼び止めた。

藤咲花音は玄関まで来ていたが、足を止めて振り返る。

丸一日。ようやく父と娘が、真正面から互いの顔を見る時間が訪れた。

和成は花音を見つめたまま、すぐには言葉が出ない。ただ、きちんと目に焼きつけておきたい――それだけだった。

長い沈黙ののち、彼は深く息を落とす。

「……こうして見ると、お前の下半分の顔は、若い頃の母さんにそ...

ログインして続きを読む