第69章 私を救ったのは彼女

藤咲花音が躊躇っていると、前を行く背中が不意に止まった。

「礼をしたいんじゃなかったのか?」

桐島征十郎が振り返る。

「まさか、口先だけか?」

藤咲花音はハッと我に返り、彼が行動で示せと促しているのだと悟った。

彼女は慌てて小走りで追いつく。

「そんなことありません。ただ、桐島社長のご都合がいつよろしいか分からなくて……じゃあ、お昼をご馳走させていただけますか?」

桐島征十郎は肯定も否定もしなかった。

花音の奢りとは言うものの、実際には桐島征十郎が車を出し、彼が決めたレストランへ直行することになった。

道中、藤咲花音は居心地の悪さを感じていた。

さっきお祖母様の入院費を払...

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