第72章 彼に逆らう

夜の十時、藤咲花音はいつものようにベッドに入った。

うとうとし始めたその時、玄関のドアを叩く音が響いた。

藤咲花音は目を開け、しばらく耳を澄ませた。

古い団地ゆえに壁が薄く、隣家へのノックがまるで自分の家のドアを叩いているように聞こえることも珍しくない。

だが、隣家にせよ自宅にせよ、こんな時間に客が来るなどあり得ないことだった。

外のノック音は、次第に荒々しさを増していく。

藤咲花音がいよいよ起き上がって様子を見に行こうとした矢先、隣に住む祖母の家のドアが開く音がした。

「こんな夜更けに誰だい? 用があるなら電話をしておくれ。孫娘が寝ているんだから」

廊下に響く祖母の声には、...

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