第73章 彼は浮気した

桐島翔太はしばらく沈黙を守っていたが、藤咲花音には分かっていた。彼には間違いなく聞こえていると。

「来週から出社するから、もう時間は取れないわ。だから来週の月曜までに返事をちょうだい」

一台のタクシーが目の前に滑り込んでくる。

藤咲花音は言い捨てると、ドアを開けて乗り込んだ。

シートに座り、閉めようとした瞬間、桐島翔太が手を伸ばしてドアを押さえた。

「離婚を急ぐのは、その仕事と関係あるのか? 言えよ、どこの会社だ?」

運転手が注意を促す。

「お客さん、乗らないなら降りてくれよ。ここは駐禁なんだ、早く出さないと」

桐島翔太は即座に言った。

「俺が送る」

藤咲花音は唇を引き結...

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