第74章 彼女は何しに来た

出社時間が迫り、ロビーは混雑し始めていた。

奇異な視線が次々と注がれる中、一条愛莉の手首は藤咲花音によって強く掴まれている。

花音の言葉を聞き、愛莉の顔に浮かんでいた憤怒が、徐々に後ろめたさへと変わっていく。

しばしの膠着の後、彼女は花音の手を力任せに振り払った。

「覚えてなさい! 征十郎兄さんに近づく隙なんて、絶対に与えないんだから!」

言い捨てると、彼女は振り返りもせず大股で去っていった。

その背中を見送りながら、花音の瞳に疑念が走る。

一条愛莉は、なぜ私が桐島グループに入社することを知っていたのか? 誰が教えた?

「カノン姉さん、今のすっごくかっこよかった!」

佐々木...

ログインして続きを読む